上海から学ぶ

昨日は国際観光論の授業でゲストスピーカーに来て頂いて、貴重なお話を色々お聞きすることができた。この日の先生は、上海市観光局首席顧問の岡本義正さん。中国に関わる仕事を始められて20数年、上海万博の開催に向けて尽力されている方だ。さぞかし長年上海に住まわれているのだろうと思ったが、大阪の高槻在住で月一で上海に行くのだそうだ。

で、この方が強調しておっしゃっていたことが、「一年以内に上海へ行って、その場の雰囲気を肌で感じてもらいたい」ということだった。「東京へ行くよりも、一度上海へ行ったほうがいい。中国はテレビで見ている以上に勢いがある。そのスピード感に触れてみれば、今までとは違う自分に出会えるかもしれないし、就職に対する視野や選択肢が広がるかもしれない」という趣旨だった。

では、上海という街はどのような街なのであろうか。先生の話をまとめると、以下のようになる。


・アジアの中心
・人口1500〜1700万人
・日本の進出企業7000社
・現地在住日本人5〜7万人
・ロサンゼルスのように、高速道路が縦横無尽に張り巡らされている
・地下鉄の総延長が400km。大阪の3倍


また、上海人の特徴として以下のようにおっしゃっていた。


・小学校1年生から英語を勉強している⇒英語がよくできる⇒ここにいる立命生のほとんどは負けるだろう
・企業家精神を持っている人が多い⇒同じ会社に2、30年も働く人はほとんどいない


なぜ、英語ができるかといえば、英語ができれば給料が上がるという構図が成立っているからだそうだ。上海には純然な観光地と呼べる場所があまりなく、上海に訪れる日本人のうち、80%がビジネス目的だということからも、外国人ビジネスパーソンが上海に集まっていることが想像できる。これらのビジネスパーソンの共通言語が英語だとすれば、英語のできる中国人が優遇されるのは自明の理だ。また、企業家精神を持った人が多いということに関連して、上海の大学生は就職難らしいのだが、会社に無給で3年間働かせてくれと頼み込む人が多く、3年働いた後独立する道を選ぶ者が少なからずいるということである。

また、「中国人は日本のことをよく知っている。一方、日本人は中国のことをあまり知らない。この両者がビジネスの上で対峙したら、どちらが勝つかは目に見えている。中国は弱肉強食の世界で、勉強できる人は凄くできるよ」ともおっしゃっていた。

このような話を聞いたら、危機感を持たずにはいられない。と同時に、先生が幾度となくおっしゃっていた、「上海へ行ったほうがいい」というフレーズが頭に残り、この目で確かめてみたいと思うようになった。

これは以前ワールドビジネスサテライトで見た内容だが、渡米する日本人留学生数が中国、韓国の留学生数に負けているということだった。中国ならまだしも、日本の人口の半分以下の韓国に負けているという事実は見逃すことができない。「人は人、自分は自分」という一言で片付けていいものなのだろうか。確かに自国で(座学、実学問わず)必死に勉強をして、ビジネスの世界で脚光を浴びる人が多いことも事実である。しかし、世界の知が集積したアメリカで異文化・異民族に触れ、必死に勉強をしたなら、ビジネスの世界で成功する確率が高まるのではないだろうか。更に、世界的な視野を持ってビジネスを展開する企業家が多く誕生することも予想される。このままでは、16世紀に世界最強であったポルトガルが後に歩んだ道を、日本が辿ることも避けられない。本当のガラパゴス化が目の前に迫っているかもしれないのだ。この先日本がどういう道を辿るかは、日本人一人ひとりの意識に掛かっているといっても過言ではない。もっと危機感を持ったほうがいいと、個人的に思うのである。

とまぁ、色々と考えさせられる授業であった。